
看護場面の中で薬に接する機会は日常的にあります。しかし、細心の注意を払っていても必ずミスは起きてしまうもので、自分では指示通りに薬の準備をしているつもりでも、薬の投与量を読み間違えてしまったり、実際に投与する際に似ている名前の患者と間違えそうになったり、ということがあります。薬に関するミスは重大な事故につながることもあり、実際に誤投薬による死亡事故も起きています。
そのため、薬剤に関する事故を予防するためにも、看護師2名でのダブルチェックを行うなどの対策がとられています。複数の目で確認するということはとても大事ですが、ではどのような点に注意して確認を行えばいいでしょうか…?
この記事の目次
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与薬に関する6R
薬の確認には6Rが大切です。
①正しい患者:Right patient
②正しい薬物:Right drug
③正しい目的:Right purpose
④正しい容量:Right dose
⑤正しい方法:Right route
⑥正しい時間:Right time
この項目の頭文字をとって6Rといいます。
①正しい患者:Right patient
患者間違いが起きないためにも、患者確認はとても大事です。似ている名前や同姓同名には特に注意が必要となります。患者確認についての方法はそれぞれの医療機関によってマニュアルがあり、一律で同じように定められているわけではありません。名前だけでの確認ではなく、生年月日やID番号も合わせて行ったりしています。最近では入院患者にリストバンドをつけてもらっている医療機関も多いので、リストバンドのバーコードを読み取って確認したりもしています。正しい患者かどうかの確認は患者にとっての安心感にもつながります。バーコード以外で確認する場合は、指差しをしながら呼称して確認する、患者さんにフルネームを言ってもらうなどの方法があります。「○○さんですね」という確認の仕方だと、患者はよく聞いていないまま「はい」と返答してしまう場合もあるので注意です。
②正しい薬物:Right drug
与薬する薬にも多くの種類、名前があり、中には似たような名前のものも多く存在します。薬剤名の間違いによるインシデントは多数発生しており、事故が多く発生し、名前が紛らわしいものは名称自体が変更になっているものもあります。似ている薬剤名でも効果・作用・使用目的は全く違うものもあります。また、最近ではジェネリック薬品も多く販売されていますが、逆にまったく違う名称になっているものもあります。慣れていると思っても、薬剤名に関する確認は必ず丁寧に行い、実際の薬と名前を他者とダブルチェックすることが必要です。
③正しい目的:Right purpose
処方された薬剤が、どのような効果・作用を期待して処方されているのか、確認・理解しておきます。同じ病気だとしても、一律に同じ薬が処方されるわけではありません。その薬がその患者に処方された理由を考え、理解することが大切です。
④正しい容量:Right dose
処方された薬は、その名前だけではなく量についても確認が必要です。アンプル・バイアル・錠剤の処方数、さらに「mg」や「ml」などの単位まで確認が必要です。たとえばボルタレンという薬には12.5㎎、25㎎、50㎎という規格があるので、どの容量が指示されているのか確認しましょう。濃度によっては希釈しなければいけない場合もあります。注射薬と内服薬では㎎が違っていたり、内服薬でも液状のものと錠剤のものがあったりもします。過剰に投与すると効果が強すぎたり、副作用が強く出てしまうことがあったりします。小児に間違って大人と同じ投与量を与薬してしまうと命の危険につながる場合もあります。たった数㎎と安易に考えてはいけないのです。
⑤正しい方法:Right route
薬の投与方法には内服・注射・点滴・座薬などの種類があり、同じ注射でも皮下注射や筋肉注射、静脈注射という種類があります。注射の際は筋肉注射と静脈注射では薬効が得られるまでの時間や作用の仕方が変わってきます。種類によっては点滴を行う際に単独で投与しなければ配合変化をおこしてしまうものなどもあります。また、末梢ルートからではなく中心静脈カテーテルから点滴しなくてはいけないものもあります。投与方法は慎重に確認し、点滴の場合はルートを接続する直前でももう一度確認する必要があります。内服薬の場合には、食前なのか、食後なのか、患者にも確認してもらい、指導することが必要です。
⑥正しい時間:Right time
薬の投与には時間が決められています。内服であれば朝・昼・夕・寝る前などです。抗生剤の点滴などの場合は1日に何回なのか、何時間毎に行うのか、どれくらいの時間をかけて投与するのかが指示されています。正しい時間に投与されないと薬の効果が切れてしまったり、濃度が高くなりすぎてしまったりしてしまいます。点滴を持続投与する場合も1時間当たりの投与量が決められています。指示の時間を守って薬の投与をしましょう。
◆6Rを確認するタイミング
与薬に必要な6Rですが、確認するタイミングも大切です。
タイミングや回数はその医療機関ごとにマニュアルで決められている場合が多いです。
一般的には3回です。
1回目は自分で薬剤を準備するときです。
患者の名前、指示内容を見ながら必要な薬剤を準備します。その際に6Rを確認しながら準備していきます。この段階で他者とダブルチェックをすることが望ましいです。
2回目は準備を終えてからです。
患者のもとに行く前に、準備した薬剤が指示内容と正しいかどうかを6Rの項目に沿って確認します。
3回目は患者に投与する場面です。
患者にも指示内容を伝え、指示箋の内容を確認してもらい、間違いがないことを確認してもらい、与薬します。
医療事故が起こらないようにするためにも、薬剤の準備や投与場面では必ず6Rを確認して実施することが大切です。
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